三宅島の茅葺き屋根は、早くに姿を消し、戦後には殆どなかったようです。
最後に残った 三宅島役所跡 の茅葺き屋根 についても、既に過去何度かの葺き替えでは、島外からの茅を使用しており、ハチジョウススキ で 葺いていません。昭和37年の噴火で、椎取神社付近にあった「茅場」が失われたことなどによって 島で 屋根を葺くための茅を調達することが難くなったと聞きました。島の茅は強風により短く曲がってしまうので、それほど屋根には向いていないということもあり、大量の茅を船で運んだそうです。それとともに、屋根をふくのも島外の茅葺き職人さんに委託して 行うようになりました。
三宅島役所跡を 前回葺き替えたのは、2000年噴火での全島避難から帰島時に、灰を被った状態の屋根を葺き替えた 2006(平成18)年 です。
最近では、カラスが屋根をつついて茅を抜いてしまうことが多く、茅を藁縄で縛っている方法などの影響もあるようで、既に傷みが目立っています。
2020年秋には、東京都の学芸員さんが雨漏りの心配から部分的な修理の必要性を指摘されました。そこで2021年10月に、黒田先生の研究で来てくださった茅葺き職人の沖元さんが、茅が薄くなったところに新しい茅を差し入れる修理・「差し茅(さしがや)」を施してくれました。
東京都の史跡に指定されている為、東京都教育委員会(三宅出張所や本庁の学芸員さん)や 三宅村教育委員会 と相談しながら、次の葺替えについて 考えていく予定となっています。学芸員さんによると、ちょうど前回から20年程経った頃に 大規模な葺き替え が必要になるのではないかというお話です。この機会が、伝統を復活させるチャンスです。
また、以前は茅葺きであった民家が、屋根を替え建物をのこしている例があるのではないかと、探っています。情報をご提供いただけましたら嬉しいです。
茅葺きの炭焼き小屋の方が、記憶に残っているというお話もきくので、民家よりもあとまで残っていたのかもしれません。
同じ伊豆諸島の八丈島でも、茅葺き屋根をもつ「高倉(六脚倉)」が東京都の文化財に指定されており、2009(平成21)年に移築の際、伝統的な葺き方を復活させました。地元の高齢の方による指導で、竹を用いて葺き替えたそうです。茅については、全て八丈島で調達するのは難しかったと聞いていますが、参考にすべき事例です。詳細な報告書が、八丈島公式ホームページから閲覧できます(リンク集をご参照ください)。
(2022年5月)
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