三宅島で「茅」として使われ、「カヤ」「マグサ」と呼ばれてきた植物は「ハチジョウススキ」(イネ目イネ科ススキ属)で、伊豆諸島に広く分布しています(本州にもあります)。本州に生える種類に比べて葉が大きい・トゲが少ないなど、伊豆諸島における植物の変異の特徴があてはまり、ハチジョウススキの場合は、本州のススキに比べて幅広で厚く、縁のざらつきが少なくなっています。中間的な特徴をもつものも多く、「ススキ」とのはっきりとした区別は難しいようです。
日当たりの良い場所に、水平に広く根を張って育ち、噴火のあとや強風のあたる海岸などにも生え、草原をなしています。
噴火の跡地にまず生えてくる植物であり、三宅島では特に 2000年噴火からの回復過程にある現在、ひとの手の加えられていないハチジョウススキの草原が広範囲にみられ、徐々に樹木も増えてきています。やせた土地に広く根を張って成長する逞しい草です(逆に、駆除には大変苦労するということです)。それが、三宅島で重宝された理由でもあります。昔は、その葉や茎を利用するため、人工的に定期的な刈りとりをすることでハチジョウススキの草原を維持し、「茅場」をつくっていました。海岸などに他の植物が混生するススキ原は、稀少な野鳥の生息地だということです。
現在の三宅島で、海岸や山などに一面に生えるハチジョウススキは、本土のススキの特徴が濃いものが多いようで、葉が細めで縁をさわると手が傷つく場合も多いです。こちらが「カヤ」と呼ばれ、かつて屋根に使われていたもののようです。マグサが乏しい時期などに、代用する場合もあったと聞きました。今でも多くのひとが、海岸や山などから沢山刈ってくるなどして、畑の敷きわら(野菜を植えたところに敷く。色々な効果がある)として使っています(マルチ(黒いビニール)を敷くことも増えていますが、その代わりにカヤを敷いている畑も多いです)。
畑に植えられているものは「マグサ」と呼ばれていて、より幅広で縁がなめらかであり、さわっても痛くありません。飼料などに用いた為、良質のものを大事に育ててきたと考えられます。今も畑の周りに防風や仕切りとして植えてあり、使っているようです。
三宅島空港に沢山生えているススキには、特に本土のススキが入っているそうです。本土のススキについては島でも「ススキ」と呼ばれている場合があります。
山野に生えているカヤと呼ばれるものと、マグサとして育てているものを完全に別の種類のものとし、前者を「ススキ」・後者を「ハチジョウススキ」と捉えている場合もあります。
以上、主に筑波大学上條隆志先生のお話や記された資料と、島の方への聞き取りによる情報ですが、種類による呼称の違いや、ハチジョウススキとススキの分布など、はっきりとわからない点も多く、今後も詳しく調査し、三宅島での生育やひととの関わり(分類・呼称・用途・分布)について、整理する必要があります。
「三宅島野外植物ノート」「三宅島史」には、「ススキ」「ハチジョウススキ」が載っています。
※参考文献は、「参考サイト・図書」をご覧ください。
(2022年6月)
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